Merry Christmas from the utility pole.

[電柱からメリークリスマス]

日本刀のような鋭さ、練磨


汚れた電柱ときれいな電柱を、縦にゆっくりつなげている
昔からあるデパートの高さまでがんばろうと、ずっとつなげている


雪が傘から降って来ていて、寒いけど僕は傘をたたみ捨てることができない
勢いが去っていった夏の日、夕暮れが月を辱める


糸を針に刺すのがうまくいかない
ドライバーでねじをうまく巻けないで、ねじをだめにする


今日体中の痛みと、抑うつと不安の中で、
電柱を、きれいな電柱と汚い電柱を重ねていく
デパートの横で僕はカラスが城に帰っていくのを見る


つやがいいカラスは僕に見向きもしない
少し変わった毛色のカラスや
足がないやつや 目がつぶれたカラスが僕の電柱で休んでいく


あいつらは僕に同情しているのか
あいつらは僕を馬鹿にしているのか


あいつらは僕とセックスをしたいのか


電線から、音が伝染してくる、色が伝染していく



『銀色の糸が雪の振る根元から、
器の狭い女がすき すぐに溢れたらいい
寒い冬が好き、暗い寒い道に入ってもっと暗い寒い小道に入る
暗さが波になって僕を鋭くさせる
女が目が見えないほど 下を向いていた
女の指を舐めた、舌がいたい
だめな勇気が出る寒さがいつも僕を包めば、
ずっと歌う女が今日を限り 声帯を切り刻む そのあとにまた僕は歌を求める
泥雪がつもって 女の胸の薄さと同じくらいになった 吸い付こう つぶそう
僕が生きていればいいだろう? 震える指を爪さきを噛んで』



電柱にだって喜んで入塔してくる 女がいる

僕は電線にあいているコンセントの穴にヘッドフォンアンプの電源を差し込んで



ベロアのヘッドフォンをして女とセックスした
うるさいあえぎ声がキャンセルされて
音楽とだけセックスしているようでうれしかった
女に痛い孤独を味合わせて、泣きそうな顔を見ると 
僕は僕が孤独だということに安心する


空には耐え難い、僕をもていじくった男のくさい精液と体臭と唾の匂いが満月と朧雲に広がっていて
僕は電柱で絶叫した



耐え難い苦痛が死ぬ間で続いていく
輪廻して同じ苦しみがずっと続いていく
解脱も望めない



電柱を僕はまた重ねていく