Ziggurat 6 piano lesson


有意として、狐火がねじれ込む鍵盤
私は押さえ込まれる、沐浴、瞑想浴、ハローエブリシング


衣擦れのように 
被膜をはぐように
退屈に
いやしさを隠すように
プラスチックの脳のように


くたばれ


そのピアノの音は外に響いているようだけど、
ほんとになっているのは、内の世界、心の世界


外に聞こえるのはただの 染み


深い森に落ちていこう


死にたいと何度もまわそう


湯気の揺れるように
シャボン玉が割れるように
ウイルスの不安のように
ため息を出す神経細胞のスパークのように
最後のチェルシーを取られた妹のように


決め付けられるように


嫌われるように


不自由ない孤独


無い 無い


秘密を打ち明ける 唇が広がるように
頼りない背中の影の ように


雨がこぼれるのが終わった音


ハローエブリシング 瞑想浴、沐浴、心に仕舞い込んでおやすみなさい。

Ziggurat5

その全知者の深い瞳は、何をも視線の対象にしていなかった。
ただ深く沈みこんでいた。


透明水彩の黒のアジサイの束を、琥珀蝶の腕輪に通した。
モルフォ蝶に沈金を施した素材のワンピース、背中のチャックを上げた。
チャックに少し髪の毛が絡まったけど、そのまま強引に上げた。
ぷつっと黒い弦がはじけた


濡れ羽の長い髪の毛を、適当に切った
髪の毛の束が、錆びた鋏の冷静な閉じる音が、床に落ちた。


下着を広げて、足を通すように言った
緩やかな流体が、下着の両足が通るところをひるりと抜けていった。

小指の爪が伸びてたので、僕は震える手で、白い手を取り、
薄汚れた瞳の僕は、細い短い小指を時間をとめるように口に含んだ。
わざとぎざぎざになる様に、やわらかい良い匂いの爪を噛み切った


『ふかづめ』
ふわっと、紅いつぼみが千切れるように咲く 声が漏れた


僕は自分の指も深爪で同じだということを伝えた。


沈金の蝶やバッタ、沈金のウイルスやカラス、沈金の悪魔や天使が、彼女を祝福した。


僕は彼女の美しさの中で、何より、スカートのすその揺れ方にどきどきした。

Ziggurat4


もうしばらくで浴槽のあれが産まれる。


僕は浴室でシャワーを浴びていた。
赤血球のこすれる匂いがする。


シャワーの管は、巨人の血管とつながっていることを想像した。
電線もインターネットも巨人につながる。
海流も季節風も巨人につながっている


惑星の軌道も無意識も巨人につながっている。


熱いシャワーが熱いと思った。
それに対して僕の冷たい指先は冷たいと思った。


この冷たい指先が、スカートのすそを持ち上げてあげて


この冷たい指先が、スカートの中に何の尊敬も無く進入して
この冷たい指先が、細いふとももの皮膚を何度かなぞり
この冷たい指先が、下着のラインを意地悪する
この冷たい指先が、湿り始めた性器を布越しに何回もいじって
この冷たい指先に、それだけで、可愛い、いやらしい、だるい、匂いがしみこむ。この冷たい指先に


セックスの半分の匂い


メガネを割りたい

セックスしない女の子とどう付き合ったらいいか分からない
セックスが嫌いな女の子とどう付き合ったらいいか分からない
セックスを出し惜しみする女の子とどう付き合ったらいいか分からない
セックス以外で女の子とどう付き合ったらいいか分からない


シャワーから 赤い 液体が流れていた。


そっか今日は生理か


浴槽が空になっていた。


僕は自分で出してない言葉を出す。


『ああたぶん本棚に隠れているな [この町には僕しか人間がいない]
ということを良く教えないと』

Ziggurat3


空気の色が霞む練乳のように淡く錆び喜び始めてきた。
崩れ落ちていくJRの貨物と車両とビルが、岸に打ち上げられていく。


17面体のシャボン玉が塔にささって、溶け出した物


欠食公園(7)で、夜伽遊具がギシギシはねて、
子供が高音の意味のある語句を何度も僕に預言する。
僕はそれを理解できない


この町には僕しか人間がいない
浴室で発生している人型にもそれは何度も伝えてある。


『この町には僕しか人間がいない』


結露した窓に
湯気で曇った窓ガラスに
水面に
浴室の人型の子宮に
石鹸の表面に
シャボン玉の表面に
空気に、二酸化炭素分子に


『この町には僕しか人間がいない』と書かれている


ああ そっか子宮ができ始めているから
切除しないと、[決まりごと]だからな


この国は、最低生活者(-7)に、衣食住性を補償されている。
形式的には大体 衣料品チケット 食費チケット 公営アパート 公営娼館チケット その他雑費


公営娼館チケットで使える、女性向けのサービスとしては、
自分に良く似た少年をなるべく自立させないようにする。
他のうちの女性と仲良くしたらきつく叱り
自分だけをいつまでも求めてくるようにする。
愛していると何回も言わせて
子供のようにしてしまい。
近親相姦に近似させる。


『この町には僕しか人間がいない』


14秒前彗星が娼館を地中に埋めてしまった。


夕刊がベランダとにえ烏を投げ込まれて、僕は内容をわかった気になる。
電話が鳴って、女の声で
[わたしはみんな私みたいになればいいのに]
[わたしはみんな私みたいになればいいのに]
[わたしはみんな私みたいになればいいのに]
[わたしはみんな私みたいになればいいのに]
と4回鳴った


僕は金魚が入った植木鉢を蹴り飛ばして
[加害者も被害者も僕なんだ!]と怒鳴った。
[おまえらはれんぞくれんぞくしているんだぞーーーーーーーーーーーーー]
[れ!んぞ!く!][れ!んぞ!く!][れ!んぞ!く!][れ!んぞ!く!]
[しているんだぞ!]


あーあーとほっぺたを膨らまして、ほっぺたから息と音を出した


黒板に子宮を[せつじお]ってかいてあったが 面倒なので、
子宮を切除したふりをした。ああ
ふりもしなかった


僕は祈るようにつぶやく
[僕は祈る、僕は想像する。僕は呪う、僕は一人の世界を連続する。]
[この町には僕しか人間がいない]


首を切られた人と
それを確認した家族と
切った加害者のことを
深く考えた


良く祈るように、玉がふるのを、沈めるように 祈った。


僕は祈るようにつぶやく
[僕は祈る、僕は想像する。僕は呪う、僕は一人の世界を連続する。]
[この町には僕しか人間がいない]

Ziggurat2

よく僕はこういうイメージをする。
円の上をボールが走っていて、加速していって 
新しい円に飛び込む


その想像を良く考えると、
ウロボロスのようでもあり。
螺旋のようでもある


僕の最小世界では、赤青緑でできている気がする
暖かい女性が赤を塗り、僕は緑を塗り、冷ややかな女性が青を塗る
それは三つ巴のようでも、二つ巴のようでも、一つ巴のようでもある。


お風呂に入ろうとおもったら、人型になる数段階まえの状態になっていた。


作り方は
水を張った浴槽に精液をいれて1日密閉して腐らせる、
そのあと3日毎日血液を与えて
神の胎内の温度で1週間保存すると人型の子供ができる。


意外と簡単にできるもんだなと思った。


血液を3日与えろと書いてあったんだけど
1日目:僕の血 2日目:忘れて与えなかった :3日目:生理の血
とわざとばらばらにしてみた。


まだ数時間掛かるみたいだから、コンビニにジャンプでも立ち読みに行く事にした。


アスファルトを蹴飛ばして
自転車に飛び乗る、
乗る瞬間に別の感覚に変わるところが好き


車輪が回転していつもこんなことを思う。
右回転は正常な回転、左回転は異常な回転といわれるが
それはただの見方でしかないと


車輪の回転音、アスファルトにする音が好きだけど
ヘッドフォンから聞こえる 
まばたきとキスと人を嫌いになるときの音 
でサンプリングされた音楽で何も聞こえない。


自転車にライトがついてないので警察に捕まるか心配
ヘッドフォンしてるから警察に捕まるか心配
車輪に蝙蝠が入ってこないか心配


コンビニでぼろぼろになったジャンプを手に取る
今週もハンターハンターがやっていなかった。


精液を溶剤に絵を描きたくなって帰った。

Ziggurat1

石川県金沢市、この町は、僕以外人間はいない
恒常機能が下品な音で回るだけで、人間は僕しかいない


そのことで寂しくなったことはないし
この町に僕はあまり興味が無い


好きなコーラとインスタント焼きそばを口にいれる。
消化に悪いから胃薬を飲む
胃薬で気持ち悪くなるから、酔い止めものむ
酔い止めでアレルギーになるのでまた薬。



今日も僕は金魚に、金箔とパレットにこびり付いた絵の具の乾いたものを与える
仕事上金箔は家に大量にある。
金魚は美しい色の欠片が振ってくることが当たりまえだ
たまにカルキ抜きを降らすと、金魚は怒り狂って抗議をする主張する。
そのときの金魚はひどい柄になる。


コーヒーを淹れるのが好きで、自分で淹れたコーヒーがすき。
世の中のものすべて、自分で作りたいなと子供のころ思ったことがある。
神の血脈だと思う。神はよく天地を創造したがる


そろそろ仕事をしないとな


僕は沈金を仕事にしている。
石川県の輪島塗でよく使われる技法で、
漆面に刃で美しい模様を削って、金を沈めこむものだ


僕は上品なほうではないので
花街でセックスの前の遊びに使われる、蝶や蛾の羽や胴体に沈金する


どんな遊びかというと
セックスする、昔の映画みたいな部屋で
沈金した虫を、暗い部屋に放つ


明かりをつけて、そこに寄る虫たちが 
金粉を少し落としながら光り飛ぶのを見る。


男はセックスをじらされて興奮して
女は自分じゃなくなる準備をする


最後は明かりの囲いを取って 
蝋燭の炎を丸出しにして。
沈金した蝶や蛾と金粉が燃えていくのを見る


それが終わって、男が女に覆いかぶさる。


これが僕の仕事の蝶の使われ方



さて眠くなるまでブックオフで立ち読みしてこようかな。