Ziggurat3


空気の色が霞む練乳のように淡く錆び喜び始めてきた。
崩れ落ちていくJRの貨物と車両とビルが、岸に打ち上げられていく。


17面体のシャボン玉が塔にささって、溶け出した物


欠食公園(7)で、夜伽遊具がギシギシはねて、
子供が高音の意味のある語句を何度も僕に預言する。
僕はそれを理解できない


この町には僕しか人間がいない
浴室で発生している人型にもそれは何度も伝えてある。


『この町には僕しか人間がいない』


結露した窓に
湯気で曇った窓ガラスに
水面に
浴室の人型の子宮に
石鹸の表面に
シャボン玉の表面に
空気に、二酸化炭素分子に


『この町には僕しか人間がいない』と書かれている


ああ そっか子宮ができ始めているから
切除しないと、[決まりごと]だからな


この国は、最低生活者(-7)に、衣食住性を補償されている。
形式的には大体 衣料品チケット 食費チケット 公営アパート 公営娼館チケット その他雑費


公営娼館チケットで使える、女性向けのサービスとしては、
自分に良く似た少年をなるべく自立させないようにする。
他のうちの女性と仲良くしたらきつく叱り
自分だけをいつまでも求めてくるようにする。
愛していると何回も言わせて
子供のようにしてしまい。
近親相姦に近似させる。


『この町には僕しか人間がいない』


14秒前彗星が娼館を地中に埋めてしまった。


夕刊がベランダとにえ烏を投げ込まれて、僕は内容をわかった気になる。
電話が鳴って、女の声で
[わたしはみんな私みたいになればいいのに]
[わたしはみんな私みたいになればいいのに]
[わたしはみんな私みたいになればいいのに]
[わたしはみんな私みたいになればいいのに]
と4回鳴った


僕は金魚が入った植木鉢を蹴り飛ばして
[加害者も被害者も僕なんだ!]と怒鳴った。
[おまえらはれんぞくれんぞくしているんだぞーーーーーーーーーーーーー]
[れ!んぞ!く!][れ!んぞ!く!][れ!んぞ!く!][れ!んぞ!く!]
[しているんだぞ!]


あーあーとほっぺたを膨らまして、ほっぺたから息と音を出した


黒板に子宮を[せつじお]ってかいてあったが 面倒なので、
子宮を切除したふりをした。ああ
ふりもしなかった


僕は祈るようにつぶやく
[僕は祈る、僕は想像する。僕は呪う、僕は一人の世界を連続する。]
[この町には僕しか人間がいない]


首を切られた人と
それを確認した家族と
切った加害者のことを
深く考えた


良く祈るように、玉がふるのを、沈めるように 祈った。


僕は祈るようにつぶやく
[僕は祈る、僕は想像する。僕は呪う、僕は一人の世界を連続する。]
[この町には僕しか人間がいない]