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こんな風に思うのは薬のせいか、僕のいない世間、舞台が騒ぎ続けているせいか


僕のはずのベッドに寝ている彼女が
甘すぎる虹色の飴玉を吐き出きだしていた
寝ながら飴をなめていたようだ
過剰な糖分が脳をあま噛みしているだろう
寝ているときに飴とか食べたら虫歯になるよ


心臓が少し痛くなる それは単なる痛みで
感情 情動 精神などとは関係なく
肉体的にただ痛い


僕はホッチキスを手の甲に押し当てて
針をさした ガチャン
にじみ出る血が遅かった 
今朝は少し暑いな


オーディオテクニカのヘッドフォンが欲しいと彼女は寝言で言っていた
それを見て僕は髪をなでて、
寝ている彼女の軽く軽く汗ばみ上気した頬の透明感に心が捕まれ
自然とキスなんかしない
おこさない程度に耳をかんだ、耳たぶではなくコリッとした上の部分


またホッチキスを左手の甲にあてて
ガチャン
ガチャン
ガチャン
ガチャン
ガチャン
ガチャン
5,6回だ、手に並べた やっぱり血が遅い


朝日が白くて 少し 褪せたクリーム色で
それは腐ったミルクの色で
でも気持ちよく僕の部屋を支配していく
夜の生き残りが、絶叫せずに一人一人無表情のまま殺されていく
ただ単に毎日起こる虐殺と


おはよう、朝だよ にっこりするね


彼女がおきた
何か飲むかい?
ネクター
朝からかい?
うん


僕は冷蔵庫に行って
ネクター ネクター ネクタァ
とかつぶやいて、とってきた
ほれ


開けて、
僕は深爪だから開けられないんだよ
あー あけますあけます
ガポン ほい


あーこぼれてるよ こぼれてるよ はい
ちゃんとのんで


あまぁい


あ、さとっくん左手の甲にホッチキス刺さってるよ
とってあげるね
彼女はそういって ホッチキスの裏で一本一本抜いてくれた
やさしいね


扇風機をまわす
回る扇風機 ぐるぐる


今日何しよっか日曜日だし
そうして、日常に飲み込まれていって
僕は考える事ができなくなる
書くことができなくなる
描くことができなくなる


君が好きだった音楽のCD
ざんねんでした。