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植木鉢が倒れた、水色の空気が透明で光が白くて
それは、記憶と重なる
ありもしない事が、おこることは無い
洗濯機を回して、寒いベランダの風を浴びて
音の悪いCDプレイヤーを再生する
いつものCDをかける
僕はパソコンの前に座り
いつもの情報を飲み込んで、それだけな生活を送る
冷蔵庫に行ってコーヒーの缶を開ける
それを飲む、もう一度ベランダに行く


空が赤い
つつむ手がどこまで、誰を抱けばいいのかわからない
閉じこんだ世界で探求する
色あせたプラスチック、ベランダの塗装のはがれ
彼女が昨日投げつけた、フォークが壁にまだ刺さっている
雲がゆっくり ゆっくり流れていって
それによって、部屋が光に満たされたり、翳り行ったり
光の呼吸が繰り返されて
平日の時間が、一歩一歩、何の不快もなく過ぎていく
風が通り過ぎる、味気もなく 季節の香りもせず
ただの風が通り過ぎていく


誰かが電話をかけてきた、それを僕は取らないし
この部屋には僕しかいない
留守番電話には、死んでやるとか、死ねとかいうメッセジではない
スーパーによっていくけど、何か食べたいものがある?という電話だった
バターのたくさん乗ったホットケーキが食べたかった
だけどそれを言うのも億劫だった、
空回りする、僕の創造力は途絶えていることを知っている
またベランダに行った、洗濯物を干す
何かを信じることや、自分にアイデンティティを持つことをやめた僕は
ある程度の苦しみから脱っすることができている
僕の苦悩は君たちとは多分全然違うものになっている
ブルーがいうことを聞かない空を君たちは絶望するのかい?
誰も僕に干渉しなくなった、


夕暮れが過ぎて、彼女がレジ袋に生活溢れるものをつめて 僕はそれがいやで
置いたレジ袋を、蹴り飛ばした、卵が割れて、ホットケーキの材料が飛び散る
さとっくん?どうしたの?と驚く彼女
僕は彼女に、なんとなくだよ、僕が夏から秋にかけて、また
日常にとどまらざるをえないことを認識したくなかったんだよ
空き地に行こう、アイス買ってあげる、ソーダのすきだったよね?
コンビニで買ってあげる、僕はホームランバーが食べたくなった
この場所で二人は狭すぎて、
みんなが思う、ありきたりで、君たちが思う幸せで、
花火がまだ売っていた、ほしいかい?と聞くと、いらないといっていたから買わなかった
灰色の生活を受け入れて、その裸が僕をまた消費させて、
情動がコントロールされて、
枯れた、プランターの花、それに黒い絵の具で色をつけた
空に広がることは無い翼は、僕がマジックで両手を真っ黒にした手で
手を広げて 広げて 広げて それも意味がなくて
家かえって彼女に洗ってもらった。


日常が容赦なく日常にしていく
足りないものを補完しても、飽和したものを減らしても
彼女が太腿を刃物で切っても
ここから、僕は出られない、
次の日、スタバで待ち合わせをして
アイスコーヒーを飲んでいたら、彼女は来なかった
僕は一人になって、アイスコーヒーを飲んだ
少し残した、いつもと違う道で帰った、夜の明かりの写真を取った


終わっていく、いつも終わっていく