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夏の影がとても黒くて
凍結した空いっぱいに広がる
墨で染めたようなセミの羽
雷鳴までもが凍結して
底にかまいたちの傷のようにすーっと亀裂が
入り皆さんのご希望のように
眼球がぼたぼた涙のように落ちてゆく
潜水して現在の狂った世界から
回避しようとしたが
海底の遺跡は抉り取られた性器のように
肺が砂で
君を守りたいと思うけど
僕の体は見る見るうちに異臭を放ち千切れていく
ハートと天使が血で描かれたリスカ写真を保存して
すこし口元がほころんだ