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コヌハとは来ぬ花、咲かない花という意味です。


一歩二歩と
ずれ始めた、ゆるい体液を彼女は嫌がり
絶日を勧告される翌月
切実なる願いを
我が故に用いる点と線とを
曲げ幽吊る銀色の髪
少しの接触と、大げさでわざとらしい離脱
繊細なるぬくもりと、アイスノンくらいの冷たさ
CD-Rに焼かれた、無修正の微笑み、といやらしさ

コヌハへの到達闇の一渕 二渕 三渕 熱であぶりだすと
ぼやけてくる人影と片思い
薄紫に刺さった、白濁を
接合部位に
安定しきった関係はそれ故に崩壊を内包して
揺るぎ閃き細やかさせせらぎコヌハ。
コヌハの年齢 性別 所在
コヌハへの到着
コヌハの色 形 美しさ
コヌハへの帰還
コヌハの下唇 瞬き やるきのなさ、
メガネを新しくしようと、街に出た
新竪町は僕は大好きだし、そこに眼鏡屋はないが、
僕はメガネを買いに新竪町に入った、
昔から変わっていない緩やかなカーブと
少し変わった町並み 中島医院よくかよったな 子供の頃
新竪町はコヌハがいるから、気をつけなくちゃ
奇抜な服装でコヌハとコヌハじゃないものとの違いはすぐわかる、
けどより濃い純粋なコヌハに出会うのは、容易じゃない
揺れる髪、無邪気な笑い声、
生命線を限界まで引き上げて千切るやさしい冷酷さ
3月の甘い夢に出ていた日 
21世紀美術館にはコヌハがいるから、気をつけなくちゃ
泉野図書館にはコヌハがいるから、気をつけなくちゃ、
僕は夜また散歩に出た、それで遭遇する体験は、僕がいつも描く話と
いっしょだ、地味で大げさでわざとらしく虚勢をはり
震える指先で装飾された、まさに僕だ、
夜の散歩 コヌハ
夜の散歩


コンビニにいつもいるフリーターの女の子は、知っている。
僕のいやらしさを、汚さを、いさぎのわるさを
僕の内面を夜のコンビニが握っている
僕が夜買い物をするとコヌハからメールが来るからわかっているのだ
赤ラインのスニーカーを買ったのは走りたくなる衝動があるなら、
放てばいいから、
暖かくなったら、ボールを追いかければいいし
シュートもしたらいい
麻痺した現実が、だんだんと感覚を得ていくごとに
コヌハと僕はとても痛みに苦しみ頭痛吐き気などの作用をもたらす恐れがあり
夜の散歩、フェンス錆びてボロボロになったフェンス
好き
昔から凄い好きで、よく雨の日傘でガリガリさびを剥がしていた
それがとても、えちーでいやらしいことで、秘密のことで
コヌハだけには知らせてはいけない。
夜の散歩 決まりきった僕の文章に出てくる 電線
脈動、脈打つ電線、電線の中に流れている血液は僕の血液型と一致しません。
コヌハの領域
波待つ、月待つ、海岸
平行線を風景に這わせて
飛ぶコヌハいろいろな光を添えて、夜の中にだけ存在する
届くところには、コヌハはいないし、
僕に良く似合うコヌハは僕には到達できない
コヌハ
コヌハうまれきった