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つらぬくたましいは描きかえられ
揺れるゆりの花束はまき散らされ
涙に濡れた夕暮れは月を呼び
終った夜は僕を眠らせ
始まりの火は青く燃え、消え
ひとすじの煙は腐り始めた鉄の板に吸い込まれ
浮遊感は彼女の絵の中に
気持ちのいい手袋はつかめず
手紙はいつまでも捨てられ
山中に白い歩く人が
老人は自分の残りの時間の長さを感じ
星はいくつもの光を
出会わない人の笑顔を
息吹を
飛沫を
ため息を
紙で切った手の傷が
真っ青な画面を
初めての生を
人を超えるとき
呼吸をはじめる前に
一つの嘘を