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夏の夜に段々重ね塗りされていって
ほんとうの夏になっていくんだろうな


さっきファミマでさらってきた少女(名前はキリメ)が
青白いプランターが並ぶベランダでカルピスのビンを割っていた
ガン!ガン!
って夜に割り響く
ビン割るより花火しようって 僕が言ったら 
まだ夏じゃないから花火しないって言われた
せっかくファミマで喜ぶかなって花火買ってきたのに


あーヤグルマギクに水やらなきゃって
僕はなんかつぶやいちゃった

わたしが水やるわ、ただでとめてもらうんだからそれくらいやらなきゃ
って誘拐された自覚無いみたい
僕も子供のころペドフィリアのおっさんの欲情はわからなかった

ブリキじゃないプラスチックのじょうろにホースから水を入れて
彼女はヤグルマギクプランターに水をやった

裸足のまま水をやったから
さっき割ったカルピスのビンの破片がキリメの足にいっぱい刺さっていた

『その行為や習慣は僕の目的を果たすのに役に立つかと言う事を考えますか?』

僕の目的地は "僕だけの境地" だっていつものように言った

キリメは『あなたを見ていると再放送を見ているようです』と目を合わせて 目は死んでいた


空が光って雨が降ってきたから部屋に入った
送れて雷の音がした

寝室のソファーに僕が座ったら
キリメは僕の右隣に座って、手を握ってきた そんで頭を僕の方にもたれてきた
それが当たり前のようにそうしてきた。

僕は髪をなでた 頬にふれた 耳を触った 
あごのラインをなぞった
首筋をさすって、肩甲骨の硬さを皮膚の柔らかさを味わった
向こう側に行く方法がこんな動作にあるとは知らなかった


足出して、
破片とるからね

スカート脱いで
パンツも脱いで
シャツも脱いで
ブラジャーもとるよ

ああ 破片がいっぱい刺さっているね
僕は一個一個茶色いガラスの破片をとった

『普段学校ではあなたの事はあんまり考えないようにしている さみしくなるから』

大体破片はとれた、傷口を消毒して包帯をした 

『ちょっと寒い』

服着る?

『あなたが欲情してるからこのままでいい』

台所のカワリにジュースを持ってきてもらった

『あなたの我慢は特にあなたの深層を堀下げたりしない ただ意味もない』

ジュースをおいしそうに飲んでいた

この街のタワーと呼ばれる施設の電気が消えた

『あいしていると、それを真実として大声で』

空襲がきて、どっかが燃えた
僕の町じゃないから大丈夫

『そう僕の町は空襲が来ないからね 空襲が来ている街はその時点で僕の町じゃなくなるでしたっけ?』

しずかにソファーで抱きしめて
キスをした
彼女は自分から僕のをさわってくれてた
ぼくも舐めたりした


それらはしずかな空間と静かな時間がゆっくりゆっくりながれていった