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外苑公園
ある6月外苑でカワリに刺されたとき、
そのときの彼女は多分まだ僕のことを憎みきれなくて
刺し傷はとてもとても浅かった甘かった


僕はさされる瞬間
しょうがないのかなっておもった
その次の瞬間 引きつっていても彼女の顔はかわいいおもった
その次の瞬間 痛いのはやだな、まぁ痛いのも数日かなとおもった
その次の瞬間 彼女のクルウの瞳を僕はスケッチするようにとっていた
ざーっと電線から音が聞こえた


僕はとても冷静だった
冷静だった
初めてセックスしたとき みたいな奇妙な冷静なかんじ
奇妙?って今書いたけど
要するに 期待していたほど興奮しないってこと


カワリはさすのはやめて 次は横に僕のお腹を切った
何かを振り払い切りたかったんだと思う
安い無印の3枚でいくらかのしろいTシャツと
僕の少し太り始めたお腹を切った ほんと皮くらい

きったときにカワリは絶叫していて 
それが耳鳴りになっていた

僕が買ってあげたレースのワンピースをない胸まではだけて
僕と同じところに傷をつけようとした

僕はカワリの肌にこれ以上傷が残るのは嫌だなと思って蹴り飛ばした
彼女が痛がるのは時に気にしてなかったと思う
刃物をそこですぐ折って

倒れたカワリの
髪の毛を引っ張ったのか
腕を引っ張ったのか忘れたけど立たせて

興奮とクルウが宿った彼女のあっち側をどうにかしないとっておもって
映画で見たようにいや 僕がしたかったから
首の後ろっかわ跡がつくほどつかんで
キスした ただ深く深く舌をいれた

愛情とかそんなんじゃなくて
ただ、おそう気分で細い体を抱きしめた

細い体を抱きしめたってやさしい文章とはぜんぜん違って
細い弱い女の体を力で心まで届くように力いっぱい押し込んだ折り曲げた?

その圧力が皮膚を通って、心まで

彼女のあっち側まで

少しして、落ち着いてきて カワリは泣き出し始めた
そんで僕はちょっとめんどくなった

あと抱きしめたときワンピースについた僕の血が
少し彼女に似合っていた 形とかね


電車で帰って一人の部屋でサントリーのウーロン茶を
2lのペットボトルからそのまま飲んだ

傷口が膿んだら、黄色い膿がごぼごぼ出てきたら
それはそれで、いいのかなっておもった

そしてとてもとても眠くて寝たら
シジョウがうちに来ていて 消毒とかされちゃってた

起きてカレーうどんとか食べた


この季節はとても蒼い自由で深みがあった