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犀川沿いを一人であるいていた
今日も灰色な空が、ゆっくりと海まで流れていっている
もう四月も終わるのに、まだ寒い


飲み終わったコーヒーの缶が冷たくなっていて
持ちながら歩くことが嫌になってきた

コーヒーを買ったファミマの店員かわいかったな
大人な硬い仕事している女の人より
フリーターとか学生とかのが好きなのは
僕が大人になっていないからかな


灰色の雲が濃淡を敷き詰めている上空に
片目がつぶれた茶色い鷹が旋回していた。
雨の振る前のにおいが、川のゴウゴウという音と混じってきた

喘息の発作の兆候が出てきた
左ポケットの喘息スプレーを確認した
まだスプレーはいらないかな
しばらくゆっくり歩こう

今はまだ15時くらい、お昼だね 寒いけど
鉄でできたものが青く感じる
鉄から、冷たさが流れていっている
近づいたら熱を奪われるんだろうなって思う


世界と思考内を分ける粘膜
自分の思考と他人の思考を分ける粘膜
僕が生きる為に貯めてある液体を包む粘膜

ねんまくが破けちゃって
消防署が僕の心に入ってきて 救急車を呼ばないと
接着剤は思考内でつくる

愛する記憶がうまくできない
君たちは重症なのに、もう立ち上がることができないほど重傷だよ

僕のことをネットで見たことがあるの?
現実とだいぶ違う、

満月をちぎって君らにあげようと思った
大切な鏡を蹴り飛ばして、粉々にして月を増やした。

身体の部位に発情はしない
フェチズムもあんまりない
年齢にこだわりは無い


散歩を続けなきゃ


犀川は哲学や文学に適している
水の汚さ、流れ方、中洲の具合、幅員、要素を抜き取ると
ただの川に見える
僕がこだわっているだけかも

手錠を買った
むらさきに行こう

もう一回キスをして、僕はうちに帰る
僕は全力で生きない

ひげをそり忘れたままいっぱいキスしたから
彼女のあごら辺が赤くなってしまった

ごめんねって言ったら
気にしなくていいって言ってた

バスに乗って自分のうちに向かった
昼間のバスはあんまり人が居なくて
紺色のきぐるみみたいなのが後部座席に乗っていた
それを僕はどうとも考えなかった


部屋に帰った、足の裏がよごれている感じがしたから
シャワーで洗うことにした
浴室で、お湯を出すのがめんどくさいから
水であらった、つべたい

炭酸水が飲みたくて冷蔵庫をあけた
ちょうど切らしていた
買いに行くのも億劫だな

冷凍庫をあけて、丸い氷を一個口にほうばった
カルキくさいな

そういえば冷蔵庫の上は、窓があったようだった気がしたけど
窓なんか無くて、壁だ
んー 記憶に少し障害を起こしているのかな
まぁ いいかと思った

部屋でくつろぐときは、ベッドに入る
布団の中にうずくまっていると落ち着く

航空機が小松から飛び立って、僕の家の上空を通過していく
さっきしたえっちなことを思い浮かべる

ああ これらが繰り返されるんだな


僕は彼女と抱き合っているときに
思考をとめるのを忘れていた

僕の思考がセックスで歯止めが利かなくて
全身をかけめぐった

彼女の胸をなめてるときに
のっとりにあった

彼女を突き飛ばして
僕は丸まり、自己内言語を音に変えてしゃべって
美しいものを否定しなきゃね

プラグというプラグを抜いて
電波も防がないとね

広域な集合された哲学意識が、攻めてくるのを
僕は裸のまま、武者震いと気持ち悪い笑みを浮かべた

憎むすべての美しい世界を
僕の心は空気中に粉塵となって舞った

思索キューブがひねって倍になっていった
部屋の半分を埋め尽くしたときに

警務官が彼女をのっとった
思考停止命令証明書をデジタルでみせて
裸の彼女は僕の首を物理的に絞めた

そんなことより、警務官に彼女の裸を見せるのがやだった


庭に下りて、ブリキのジョウロに水を入れて
しましまのワンピースに着替えた彼女は笑いながら笑いながら
小さくてかわいい虹を作った


僕は虹に触れて、彼女の冷たい頬に触れて 落ち着くを取り戻した


灰色に広がるこの世界はなにも起こらない 
虹なんかかからない