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動かないほうが楽に 動かさないほうが楽に
停波時間がもう少しでくる
全世界の通信が止まる
僕は甘い飲み物は普段からあんまり好きではないけれど
ココアが飲みたくて、自販機で買った
停波時間を狙って灰色の空に灰色の戦闘機が一機とびたつ


何で女の子が僕なんかを好きになるか考えていた
嘘をついていることも考慮に入れている


流体の気持ちが実在しだして、アルコールのようなよどんだ
光の反射の透明な液体がすでに溶けているのに溶けていった


買ったはずのココアをどこかで忘れてしまった。
僕はまた自販機まで行って
フェリカでココアを買おうとたら
停波時間がきた

小銭を右ポケッからト出したけど30円足りなくて
財布の中には5000円札しかなかった

甘いものが得られなくて
甘いものがほしくて
そこら辺のコンビニでバイトしているフリーターの
唇とかほしかった
女子高生でもいいよ


小銭をさがしていたらポケットに小さなガラスのサイコロが入っていた
あとレシートとコンドームの包みの切れ端
フリスクの空き殻
4日前の買い物リストと
僕自身が入っていた


街頭の宣伝のおっきなテレビモニターはすなあらしで
僕の携帯は圏外で

遠くにミサイルが落ちた音がした

僕の歩く音が僕に響いて、僕の耳にひどく邪魔に感じられた
耳を切りたくなる

ミサイルがまた落ちた

夏の暑いアスファルトが溶けそうなくらい陽炎がゆらめき
せみの鳴き声がしみこむ夏のある日中に

ミサイルが落ちた跡を見に行った日をおもいだした


洗濯物をとりこまないと
買い物をしないと
本を返さないと
僕を取り戻さないと
ぼくなんてなんもないよ


シジョウがみんなとお昼ご飯を食べていて
僕は遠くから歩きながらみていて
僕は少し早く歩くから、シジョウが視界から早く消えることが
いやだった(だからといって遅く歩いたり止まったりすることは考えもしない)
僕が否定されて、僕が作られるはずで
僕なんかなくて、それも知りたくなくて
意志を蹴飛ばす。


午後から
紙飛行機折りの人が来ていた
彼女が折るほど、飛行機は遠くまでとんで、色は変わっていった


僕は仕事を少し抜け出してカワリの部屋で、血を飲んできた
あんまりすると、ヘモグロビンまた減るよって言ったら
寒い事いわないでねっていわれた

僕も血まみれになって、セックスする
僕の幼い脳には、すこしノイズになるけど
快楽で、どうでもよかった
自分の好きなようにやるのが、いい
カワリにもっとまみれることが気持ちよかった

つかれて、あたまがぐるぐるしだして
中空に舞う命に
嫌疑に

塾に戻るためにカワリと一緒にシャワーを浴びるのだけど
彼女の部屋の浴槽は血が染み付いて取れなくなっていた
そのことに別になんともおもわなかった
何か分解するときはカワリの家がいいな

カワリの青白い顔も、隠しきれていないクマも
貧血でいつも横たわっているだらしないけだるい仕草も
細い傷だらけの体がとてもいとおしく思える

ムラサキを出て、
塾に戻った
そこらへんの子に、くびに何かついていますよって言われて
血がついているのだろうなって思って、
まっくでてりたま食べてきたって言っておいた

洗面所でみたら、彼女の小さな口に吸い付かれた跡だった

父親とおなじ因子の僕がいて
あの気持ちの悪いしぐさをして
人に嫌われる