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僕の精神は、いつもより高い、より深い世界に、ゆっくりと挿入されていっている


寒さが心地よくて
人がいないレンタカーの駐車場で
背中にはホテルが立っていて
みずたまりに反射している光が、ぬるぬる光っていて


悪魔は日曜も僕の時間を奪いたい
僕はそれにおおじる

僕と悪魔の関係はより深く考察されなくてはいけない
悪魔は、僕なんか見えていない


これを読んでいる君のほうが、
多分僕に近い


白い悪魔は明日も僕を矮小化させる


文章を書くことのリハビリと現状把握
僕がいつも作るアトモスフィアが乾燥した空間にクラッシュが起こる
それは強い錆びた鉄のぶつかる暗い重い音で
僕はその音が好きだった

僕は握りこぶしを作る 手に爪が食い込む

鼻から脳に消毒された医療器具を差し込まれる
そんな感じに似た 感覚 がクラッシュとともに起こる


すると見えているプールの底のような僕の世界の端っこが
ゆっくりとロールしてくる
それは水で濡れた紙が、皺くちゃに乾いてくるみたい
ごわごわしている、しみや焼けがオーバーしている


多分音大とかでてるのだろうな、ってきれいな女の人の整った調律された歌声が
聞こえてくるけど、端っこのロールがクロールしてくると
歌声の音質が生物的な雑音を超えてつぶれていく
膜や肉皮膚骨神経がすり潰されていくそれは全部プラスチックでできている
大きなクロールが大きめの部品をつぶして
残りを小さなクローラが形式を守り正調していく


僕はこんな世界で、校庭の校長先生とかが立つ台にたたされた
僕しかいないこの世界で、僕は生徒たちに演説をしなくてはいけなかった


うさぎが少女を迷わせて、大人にしなかった
大人になれなかった 成人の少女は
成長部分が余って
切り取る作業を強いられていた

使い捨てのメスと
事務用のカッターと
果物ナイフの小さいのを

世界を少しだけずらすために
シボは一番好きな男の人のことを考えていた
二番目以降の男の人と暮らしていた
二番目以降の男の人の背中に背中を合わせて
本を読みながら
一番好きな男の人のことを考えて、体温を高めた
二番目以降の男の人にその体温が伝わるのが申し訳ないとおもってない

一番目に好きな人の期待しすぎる寂しそうなにおいを感じたいな
とシボは思った


シボはメガネをとって、ひそやかにやせた自分の体を触った
「俺(シボ)の体を触ることができるのはのは本当は一番好きなひとだけだ」
シボはそう思って、本を閉じて 自分も閉じた パタンと


血管が街中を走っている
神経が都市をつないでいる

困難になるほど、有機体は進化を遂げ続ける
有機体にこだわる教授は、世界の分割方法をしらない

ロールしてくる 世界の端が
僕をロールし始めた

僕のは悪魔に食べられているから
今日もまたオーバードライブしない


シボと僕は関連付けられない