ハクイ1

「羽喰い」



登場人物
カワリ 細い女の子 瀉血が趣味
シジョウ 僕が理想にしていた空想の実在する女の子
シボ 隣にいるかもしれない 通り過ぎるかもしれない女性 
僕 僕は一人称かつ三人称


カワリ
細い手首から虹色のフィルムでできた紙飛行機が飛んでいく
風にのって、生きることを忘れて飛ぶ オレンジ色の空に溶ける
グラディエーションが海まで続いていく
触れない
何も無い
この紫色の建物は、心理的に封じられている
彼女たちの生きる意味を更生させるための施設


この地方都市の人口はたしか二万五千人くらい
市の公共施設は、それぞれ建物の色が特徴的だ
小学校は黄色、保健所は白、市役所は何色だっけか、


セイレキ2005年の夏休みに僕が過ごした、ハクイの街 
カワリ
シジョウ
という二人の女の子と過ごした、暑い夏を回想してみる
僕の記憶はもう溶けていた
不確かさと、あいまいな記憶を転写する、その転写装置は歪みと軋みの音がする


僕は2005年のある日会社で自分の机を蹴飛ばして、
パソコンを座っていた椅子でぶっ壊して
大声で撒き散らして
会社を辞めた
貯金がそんなに無かったから、順当に実家の金沢市に帰った。


僕は金沢駅でベージュのワンピースを着て紫色の腕章をしている
ほそっこい女の子をみつけた、そんで家に連れて帰った。

その子に名前を聞いたら、「カワリ」とだけ唇をかみながらぼそって呟いた
部屋に入れて、ぼーっとしていたら
 
後から冷たい手のひらが服の中に入ってきて
もぞもぞする

ミルクピッチャーをこぼした
牛乳が飛び散る
白い白い


夕立の上がった窓の外に見える砂利道で、子供がピンクと水色の服を着て
水溜りを飛び跳ねている
飛沫がきらきらする

違いと違いの違いを確認する
線と膜
光殻がラファライトされて行く
短い言葉だけをまとめて
オレンジの時間を再びすごすのは欲望のため

いろいろなことがらが終わっていく、ゆっくりと終わっていく
アルバムが端っこから終わっていって
何もなくなる
記録と記憶がなくなる

選択の権利を得ることすらない
目の前がただ、終了していく
電源が切れるように、風で折れた電柱さえも
まるで、水の中のようにゆっくり倒れていく


そしていろいろなものが鮮やかに見える
彩度が過度に表現、意志を示しだす。
虫の触覚、雑草の葉脈、新聞の文字、幽霊の緑、ガラスのマント、気まぐれなパレット


過ごし方の指標 について浮かべた
すべて、無難にすごそう
季節もイベントごとがあることで感じる

感覚は鈍感のままでいよう
作成するものは誰かの劣化物にしよう
乱暴にするためだけに抱こう
子供を作って殴ろう

すべての事柄を、ルールの中だけで考えよう


カワリにゲームを教えてもらった

□死体ごっこルール■

その1 本当に死なない
その2 僕は思うとも思わない
その3 あきたらやめる


細いカワリとセックスして心が穏やかになる、お薬飲んでお風呂に入っていてたら
お風呂のお湯が全部性的な体液かという錯覚を感じた
気持ち良くも悪くもなかった。


部屋が散らかったからカワリに整理してもらおう
ダイエットコーラのペットボトルと
キャラメルポップコーンの袋がいっぱいで
とてもわかりやすく矛盾していて
誰かに笑われた感じをすごく実感してしまい
気分が落ち込む


ハクイの中心街のアスファルトと信号
象の足のような皺が、アスファルトに走っていた
いつの間にか夜で、地面がぬれていた
信号の色が変わると
濡れたアスファルトに映った、揺らぐ光も青から赤に変わって
そっちの色のほうが
信用できる色だと思った。
綺麗だから、

特別な女の子が僕を無敵にさせるだろう
そんな幻想を持っていた
手をつないでね
カワリでは無理だった、カワリじゃ 高いところには届かなかった
カワリの手をつないでも僕の手はカワリの薄い胸までしか届かなかった

カワリが太ももを切った血が混ぜられた
チョコレートをつくってくれたから食べた
甘かった


想像力と孤独
孤独がないと書けない
孤独を愛すると乾く
乾くと女の子に手を出す
手を出すと孤独が失われる

人生を書くことに決めたら
これを繰り返さなくてはいけない

という事は僕によって女性は消費され続けなければいけない

ヘッドフォンとイヤフォン
散歩中も家にいるときも
音楽聴いてないときも
ヘッドフォンやイヤフォンをしていないと
落ち着かない
今日は落ち着かないのを我慢して
散歩中3時間ほど なにもつけないでいた
喉の奥が乾きだして
金色の馬が太陽が飲み込んで
星という星が自由に動き出して
口を大きく開けていたら 舌がちぎれた
うまく頭のバランスをとらないと
脳がこぼれそうで参った。
夜歩きたちが騒がしくなった。

だめなこと
とにかく自分が好きな子を自分の事を好きにさせたい
けど僕にはなにもないから
何かしらの快楽で酔わせようと
思う

シボにセックスしたいといったら
返事がなかった
妥当だと思う
散歩しては暗がりに連れ込みキスだってするし
体だって触る


ただ僕は自分を承認してほしいと
保守しているものを投げ出してほしい

僕の目の中に彼女の目があって
目の中の透明さ暗さよどみの差で僕は食い散らかす

件 くだん
今日件にあった
未来を予想されて
僕はそのようになる
しろが白いままで
あかがあかいままでいることはない
頂に立つものは
僕の踏んでいる地面を
知らない。


助手席
免許ないのでいつも乗せてもらうのだけど
運転中にドアを開けて飛び降りたくなる
高速とか乗ったらやばい
はじけたい。

人一人が正気でいるためには
3,4人の人が狂気に触れないといけない

僕が生きるのには4,5人の女の子が必要
けど僕は自分をだまして

自分の中に女の子を作る(現実と向き合うために)

その女の子と現実の女の子の差がわからなくなって

満員の電車の中で抱きしめてキスをしたり
カフェで胸をなでたり
そんな感じのことをする

僕の中であるか外であるかは
とにかくに実感しない

僕はまだ乾いている

現実はやさしいよ

僕が思った事があたり一面に漏れ出していく



さあ
明日も我慢しよう



シジョウ
心が健康なおんなのこ(シジョウのこと)なんて僕と縁がないかと思ったら
仲良くなっちゃった


シジョウは四條家のお嬢さんで、苗字しかなくて名前が無い、みんなからシジョウさんとよばれているとにかく健康で明るくて、僕の暗闇などは見ることができないほど
輝いていた


とても僕は健康な女の子は慣れてなくて
ぎこちないキスとかする
シジョウとセックスしたいと
強くは思わなくなってくる
この僕が、(性におぼれた)


シジョウの反応する態度が僕の求めているものと違って
弱る
僕にはシジョウは似合わない


僕を魅了するには壊れかけたものじゃないとだめだ
僕は考える
僕は欲している
そんな事より
文章に飛び込まないと


シジョウに
イチゴ味と
チョコイチゴ味と
グレープ味と
ストロベリークリーム味

どの飴がほしい?って僕が聞いたら

全部っていうのが、正解な答えだよ

あー言い忘れていた 僕は仕事をやめて、ハクイで塾の講師をしていた。
シジョウは高校生で、僕が担当していた。


非常階段
シジョウを講義が終わったあと連れ出して
7階の非常階段でキスして抱きしめた
最近抱く女の子(カワリ)は細い子だったから
シジョウは少しごつく感じた
もっとキスをすることにいやがったらいいのにと思った
もっとやらしい事もしたかったけど
唇の動きが気に食わなくて、なんとなく冷めていった
でも手をつない指をからめていっしょに帰った。


家に帰ってカワリに電話してえっちな事しようと思ったけどそれも億劫でやめた、
薬多めで寝よう。
何も守れない、

鏡に映る気持ち悪い死んだ目と表情のおじさんが
僕に何か言いたげだったけど、それを聞くのさえ
めんどくさかった。

僕は今日も死んだままで、過ごす。
さっき机の上のパソコンと絵の具といろんなガジェットを
机ごと蹴り飛ばした
すごい音がして、
のみかけのヴォルビックとか巻き散った


僕はしばらくして少し冷静になって
パソコンを直した。
日記とか書いている。
明日も僕が認められる事もない。