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いつも通る 海岸どおり 
寂れた 事故かなんかで曲がったさびたガードレールに
沿って歩く ぼんやりと

昭和の香りが残る 茶色のビル レタリング?で看板にビルの名前が書かれていて
さびた感じが気に入っている

いつも学校帰りの時間、その4階の小さな窓から 顔を出す少女に ぼんやりとした恋を
その距離が、見上げる距離が 愛と似たものへと走らせた


うつくしい人よ、窓から見上げる空はどうだい?
「水色が素敵ね」
うつくしいひとよ、窓から見下ろす海はどうだい?
「水色が素敵ね」
水色好きかい?
「私のこの世界、この部屋には水色はないから」
外に出たらきみのものだよ
「ドアがないから出られないの」
僕が出してあげるよ、
僕は長い長いはしごをつくって
彼女の元へ走った 彼女を救い出せるのは僕だけだ
いま助けてあげるよ この世界、僕の世界の水色は君のものだよ
「ありがとう とってもうれしいわ」
彼女の部屋にはしごをかけて 迎えにいった


さあ僕につかまって、
おいで 水色の世界へ
彼女が外に出た瞬間 水色の毒が彼女の全身をめぐり
心臓まで溶かし
力が抜けて、はしごから落ちて行き
まぶしくはじけ 水色に染まったワンピースを残し 
キラキラ 蒸発して消えてしまった