高層エスカレータ

ガラス張りの建物
プリズムがドームに広がる
赤と青とキイロと緑の風車が大きく回っている
その風はドームの中の人の頬の産毛をうらして
鼓膜に圧力を与える

巨大なエスカレーターが最上階まで螺旋に続いている。

エスカレーターを上がる
降りる人とすれ違う、今日も僕はすれ違う、すれ違っている
上がりのエスカレーターに黒い大きい荷物を載せて
金沢市ではエスカレーターの手すりに蝶がとまる時がある
気泡の破裂する音、ピンクの粘膜にが濡れてこすれる音
シャボン玉が割れる音、蝶の羽音、シンバル
この蝶はカラスの羽みたいに油膜みたいな光を反射させる
金髪の女の子とすれ違う
大きな黒と虹と蝶
僕は黒いコートをまきつけて、
長い長いエスカレーターに座る。

『62階まで12分です。』

さっきの金髪の子がやってきた、僕の隣に座った。
なれなれしいなとおもった。
さすが外人

「日本人ですよ!」と金髪の子が僕の単純な思考を
見透かしたように得意げな笑みをうかべて話し始めた
「そうなんだ」僕はボソッといった。 僕としてはどっちでもよかった

「私知っているの貴方のカバンにはガソリンが入っていて、貴方の作品を燃やすのね!」また得意げに
なんだ、きちがいかとおもった。

僕のカバンにはガソリンが入っているのは正解、
彼女に買ってあげられない高い服をお店で燃やそうと思っていた。ここ不正解。

僕は作品を燃やすという、とても崇高な期待をされているんだな
このことセックスしたいなと思った。

彼女の眼の中に潜りたかった、
僕は人と会うと相手の眼の中をよくみる
信用できる人(僕の事好きな人)とそうでないひとがわかる

彼女は僕のこと好きだ、

ああ買えない服を燃やすのをやめて 作品を燃やそう
作品なんてないんだ、僕が不完全な作品をつくるわけないだろ
そんなもの作品じゃない、落書きだよ

そんなこと考えていたら、

金髪の彼女はビニール傘をエレベータの柵にガンガン当てる遊びをしていた
それはたのしそうだった、
傘の部品がつぎつぎ折れていって
ぼこぼこ下に落ちていった。

ああきれいだな、セックスしたいな

作品今から作ればいいか、人の作品でもいいや

金髪ちゃん!そこら辺に売っている高そうなワンピースは僕の空想の作品だよ

僕は荷物から、ガソリンの入ったケースをとりだして、
一番近くのブランドの店にいって
ガソリンを撒いた

店員やら警備員やらがすぐにやってきた



僕は火をつけた。


セックスできた、気持ちよくなかった

燃えたあとを数日たって見に来た。
ここで何かを作ろうと、燃えて骸骨になった彼女と添い寝しておもった。

弱い貴方は何も 作品 を作れないわといわれた。